小野二郎の実現されざる書籍企画より

『新しい文学史のために』ほか目次案(個人蔵の草稿のコピー) わが師であった英文学者・編集者である小野二郎(1929-82)の命日は4月26日、晴天の霹靂の訃報が夜中に届き、通夜、葬儀までのきわめて非日常的な数日間が(二十歳代だったこともあり)記憶に深…

“Kennels Supplied”

2021年の正月早々、ジョージ・オーウェル(1903-50)の『動物農場』が話題になった。『朝日新聞』元旦朝刊の「天声人語」で取り上げられたことによる。その記事の趣旨とは全然関係がないのだが、この機会に『動物農場』について思い出したことがあったので、…

verum factum est 真なるものはつくられたもの

書き出しで一気につかまえられる本というのがある。初めだけよければいいというものではなく、尻切れとんぼで失望させられることもままあるが、小説であれ、批評作品であれ、読み出したとたんに著者の術中にはまって途中でやめられなくなる名著がある。若い…

汚れなき空のかけら――E・М・フォースターのディストピア

E・М・フォースター(1879-1970)の「機械が止まる(The Machine Stops)」の初出は『オクスフォード・アンド・ケンブリッジ・レヴュー』の1909年秋学期号で、その後短篇集『永遠の瞬間』(1928)に収録された。1947年に編まれた『短篇集』の序文で、著者は…

「ジョージ・オーウェルと現代―没後70周年記念シンポジウム・講演会」中止のお知らせ

(お知らせ)2020年3月24日(火)に日本女子大学目白キャンパスにて開催を予定しておりました「ジョージ・オーウェルと現代―没後70周年記念シンポジウム・講演会」は新型コロナウイルス感染症の影響拡大に係る日本女子大学の方針を受け、中止とすることを決…

予告「ジョージ・オーウェルと現代―没後70周年記念シンポジウム・講演会」(2020年3月24日)

開催が正式決定したので以下に予告します。 「ジョージ・オーウェルと現代―没後70周年記念シンポジウム・講演会」 日時:2020年3月24日(火)13:30~17:50 会場:日本女子大学目白キャンパス新泉山館1階大会議室 第一部:シンポジウム「オーウェルと現代」 …

第4回デザイン史分科会 「ウィリアム・モリス研究会」 12月21日(土曜日)12:50~17:30 慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎2階 中会議室 スケジュール 開会の言葉 横山千晶 12:50~13:00 第一部「作家としてのモリスと創作のインスピレーション」13:00~14…

「わたしはいまもソーシャリスト」(1896年のウィリアム・モリス)

ウィリアム・モリス(1834-96)は晩年の1890年代は、体調悪化もあって1880年代のような精力的な社会主義活動はおこなえず、ハマスミス社会主義協会を中心に規模を縮小して運動をつづけていた。ケルムスコット・プレスでの本造りに重心を置いたことで、モリス…

小野二郎「ラスキンとウェスカー」

「小野二郎著作集」に未収録のエッセイ「ラスキンとウェスカー」(1982年)を以下に掲載します。 ラスキンとウェスカー 小野 二郎 一九七三年の秋のことだったと思うから、もう九年近くの前のことになる。当時ロンドン郊外に滞在していた私のところにウェス…

講演会のお知らせ

日本比較文学会東京支部3月例会 日時:2019年3月16日(土)14時~ 場所:早稲田大学 文学学術院(戸山キャンパス)33号館16階 第10会議室 講師:川端康雄(日本女子大学) 司会:庄子ひとみ(順天堂大学) ※一般の方もご自由に参加できます。参加費無料、予…

オーウェル『一九八四年』シンポジウム(2019年3月5日)のお知らせ

【お知らせ】 オーウェル『一九八四年』とディストピアのリアル―刊行70周年記念シンポジウム 日時:2019年3月5日(火)午後3時~6時(受付2時半~) 場所:日本女子大学目白キャンパス新泉山館2階会議室 講師:星野 真志(マンチェスター大学大学院博士課…

レイモンド・ウィリアムズ研究会(2018/6/2)

ウィリアムズ『辺境』の訳者解説

レイモンド・ウィリアムズ『辺境』(小野寺健訳、講談社、1972年)。書架から取り出して訳者解説を謹んで再読。味わい深い、平易な文章で、ウィリアムズの小説の急所が的確に語られている。 そのなかに小野寺先生ご自身の少年時代の非常に印象的な回想が挟み…

スポーツ精神

ロシア・サッカーの名門ディナモ・モスクワが英国に遠征したのは第二次世界大戦の終結後まもない1945年秋のことだった。UEFA(欧州サッカー連盟)設立の9年前で、英国では海外のクラブとの対戦は親善試合でさえも珍しく、開催された4試合とも満員の大観衆を…

Prof. Keith Hanley特別講演

日本女子大学文学部・文学研究科学術交流企画/一般財団法人ラスキン文庫(共催)John Ruskin and Cultural Tourism A Special Lecture by Prof. Keith Hanley (Lancaster University) chaired by Prof. Yasuo Kawabata (Japan Women’s University) 日時:201…

「奴らを通すな!」 1936年10月4日の「ノーパサラン!」

79年前の1936年10月4日も日曜日だった。その日、ファシズムに対抗する重要な出来事がイギリスであった。場所はロンドンのイースト・エンド、労働者階級の居住地区で、移民労働者、特にユダヤ人が多く住む。そこにオズワルド・モーズリー率いる英国ファシスト…

ディストピアの言葉づかい

日本国の現政権の問題を指摘するのにジョージ・オーウェルの名前がしばしば出てくるのは当然のことであろう。じっさい、現政権が憲法違反の安保法制を押し通そうとしている光景は、オーウェルの『動物農場』の世界を彷彿とさせる。考えてみるとこの物語の筋…

ウィリアム・モリスと現代

以下、イベントのご案内です。お時間とご関心のあるむきはぜひどうぞ。 日本デザイン協会(JDA)、日本建築家協会(JIA)デザイン部会共催トークイベント「ウィリアム・モリスと現代」 川端康雄 × 大倉冨美雄産業革命に始まる近代化の波にさらされ、生…

天国への階段

懲りもせずというか、身の程をわきまえず「過剰受注」のツケがまわって、締め切りをとうに過ぎている原稿をようやく8割方進める。結論が見えていて、書くことで自分に新しい発見が得られそうにないような類の書き物はいささか書くのがつらい。 気晴らしに庭…

魂と関係

いつになく「魂」という語を思ったら、20歳代で出会ったふたつのパッセージがよみがえった。 ひとつは木島始の詩「とむらいのあとは」より―― たおれたひとの たましいが うたえなかったもの ゆめみよう 銃よりひとを しびれさす ひきがね ひけなくなる 歌の…

年末に西方へ

クリスマスシーズンに九州へ、4日間、天草、肥後の国をまわる。空路で羽田から熊本空港へ、車を借りて天草の上島に入って南下、キリシタン弾圧に関わる史跡を訪ね、牛深港からフェリーで鹿児島県の蔵乃元港へ、海岸線沿いに北上して水俣へ、その後熊本経由で…

ホテルニューグランドにて

めずらしく日の暮れないうちに退勤して目白から渋谷経由で横浜へ。みなとみらい線元町・中華街駅、地上に出るとすでに日は暮れている。山下公園そばのホテルニューグランド旧館、レインボーボールルームにて「金子勝彦さん サッカー殿堂入りを祝う会」に出席…

茶話会とおとむらい

2月25日(土)午後2時よりラスキン文庫ティーパーティ。銀座ミキモト本店の上階にあるホールにて。例年2月下旬に行われ、最初に30分のショートレクチャーがあり、そのあと茶話会。先日ラスキン『ゴシックの本質』の訳本を出した関係で、それにまつわる話を秋…

こころのこころ

昨日の東京代々木「さようなら原発1000万人アクション」での藤波心さんのスピーチと「ふるさと」の歌。岩井俊二監督のドキュメンタリー『friends after 3.11』にも出ていた方だが、 15歳、中学3年生……すごいなあ。

小野二郎『ウィリアム・モリス通信』

こんな本を編んだ。ウィリアム・モリス通信 (大人の本棚)作者: 小野二郎,川端康雄出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/02/11メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (6件) を見る『ウィリアム・モリス――ラディカル・デザインの思想』(中…

自由とは

12月6日(水)12:30〜午後1時、メディアセンター運営委員会。1時15分〜3時10分、学部長会、3時15分〜4時45分、常任理事会。5時〜6時、進研アドによる入試動向分析を聞く会。土曜の学会発表の準備をする時間がろくに取れない。12月7日(木)2時限目イギリス文…

YBAの時代

12月5日(月)午前中歯医者。午後から学務。12月6日(火)2時限目イギリス文化講義。「ヤング・ブリティッシュ・アーティストの時代」。パワポ資料、いつも以上に多く、デミアン・ハースト、クリス・オフィリ、マーカス・ハーヴィー、サラ・ルーカス、ロン・…

イギリス文化史教科書「まとめの会」など

12月2日(金)2時限目大学院のイギリス文化講義。モリス商会設立の前段階。20歳代前半、ストリートの建築事務所への就職、バーン=ジョーンズとの共同生活、ロセッティに促されての画家修業、結婚、そして装飾デザイナーの道へというおそらく挫折も伴う自己…

Melody, life is a running race?

ダイアリー、ちょっと離れていたつもりがほとんど1月ぶりの更新か。11月もあわただしかった。 12月1日(木)2時限目、イギリス文化演習は1971年の映画『小さな恋のメロディ』を使った発表と討議。南ロンドンのコンプリヘンシヴ・スクール(総合中等学校)の…

祝日が休みの日もある

10月31日(月)午後1時事務打ち合わせ。3時、学生との面談。5時限目、西洋古典・中世文学特論。11月1日(火)2時限目イギリス文化講義。午後概ね学務の仕事。帰宅後、DVDにて映画『ミリオンダラー・ベイビー』を見る。11月2日(水)10時、学務部部課長会議。…