学/雑務のない週末

 5月の連休明けからこれまで、平日は当然のように学/雑務があって、土日も半分ぐらい公務。この土曜日もある問題で緊急に会合が開かれることになったものの、研究会出席の予定がありますのでといって勘弁してもらう。その研究会は、慶應大学三田キャンパスにて、イギリス文化史教科書プロジェクトの例会。午後1時から7時半までの長丁場。内容は3部に分かれ、(1)野田恵子さんの報告「規範的異性愛と『寛容な社会』―イギリスにおける『同性愛』の脱犯罪化と『同性婚』の合法化」(2)教科書のチャプターの企画について4名(茂市順子、福西由実子、近藤康裕、渡辺愛子の各氏)の中間報告。(3)大貫隆史氏による「(イギリス)ニューレフト主要文献解題」。2008年度は在外研究で欠席だったもので1年のブランクがある。cultureを問うことの批評意識をみなとどれだけ共有できるか。すでにshintak氏がこの会のコメントをしていて、これから具体化される教科書づくり(『愛と戦いのイギリス文化史1900-50年』の続刊で1950年から現在をあつかう)にむけて、その「文化史」自体が「メタカルチャー、Kulturkritikの最先端であるという自覚なしには何も書けまい」と釘をさしている(「メタメタ」)。そう、心してかからないといけない。だんの家で打ち上げ。終電で帰宅。
 本日(日曜)は久しぶりに終日自宅。来月刊行予定の翻訳書オーウェル動物農場――おとぎばなし』の再校ゲラの最終チェック。このところ通勤の行き帰りの電車のなかでしかゲラを読むことができなかったので、一日だけとはいえ家でじっくりやれるのはありがたい。本文はこれで完了。あとは解説文のゲラのチェックを残すのみ。
 作業中のBGMのひとつはこれ。

武満徹 ギター作品集成

武満徹 ギター作品集成

 武満徹の「ギターのための12の歌」(1977)が入っている。その「12の歌」の1曲が「インターナショナル」。『動物農場』によく似合うといったら皮肉に聞こえるのだろうか。このギターの編曲で聴くと歴史的な名曲であることがよくわかり、iPodにも入れて、すごい時代錯誤なんだろうなあとは自覚しつつ、日に一度は、ああ、インターナショナル。
 『動物農場』では「イギリスのけものたち(Beasts of England)」という歌が物語のはじめのほうで「メージャーじいさん」という長老のぶたによって導入されて、それが「飢えたる」動物たちの琴線にふれ、革命を志向させる力をもつ。そのさわりを拙訳で引いておきます。

 この歌が歌われると、動物たちは大いに興奮してもりあがりました。メージャーが最後まで歌いきらないうちから、かれらは自分で歌いはじめたのです。いちばん頭が悪いものたちでさえ、もうふしと歌詞のいくらかをおぼえてしまい、ぶたやいぬのようなかしこい動物などは、ほんの数分で歌詞をぜんぶ暗記してしまいました。それから、二、三度おさらいをしたあと、農場の動物たち全員による「イギリスのけものたち」のものすごい斉唱(せいしょう)がはじまりました。うしはモーモー、いぬはワンワン、ひつじはメーメー、うまはヒンヒン、あひるはガーガーと、歌いました。みんなこの歌がすっかり気に入ったものですから、五回つづけて歌いました。じゃまが入らなかったら、一晩中だって歌いつづけていたことでしょう。