Taking Liberties

外に出かけて街を歩いてみたかったが、スケジュール的に無理なので終日家にこもって仕事。原稿を書き進めているが、長くなるばかりで、まだ結論まで行けない。

原稿のテーマに関連するドキュメンタリー映画。クリス・アトキンズ監督の2007年の作品。日本では未公開のようだ。タイトルのTaking Libertiesは、「勝手なふるまいをする」を意味するイディオムに、「自由を(奪い)取る」の意味を掛けている。トニー・ブレアとニュー・レイバーが、政権獲得後10年間にわたって、国民の自由を守るという表向きの言葉とは裏腹に、いかにして諸個人の自由を組織的に破壊してきたかを暴いている。日本ではマイケル・ムーアによるブッシュ批判のドキュメンタリーが評判になったが、こちらもムーアに劣らず(タッチは異なるが)インパクトが強い作品だ。2005年の労働党大会で外相ジャック・ストローイラク介入の正当化の発言にフロアから「ナンセンス」と言ったために会場から追い出された党員のウォルター・ウルフガング。反戦デモに参加したり、反政府的な言動を行ったりした者、あるいはテロ組織とのつながりを証拠なしに疑われた名もなき人たちが、どのような非人道的な扱いを受け、蹂躙されたかを、怒りを込めて(また独特なギャグを交えて)描いている。2006年の労働党大会でのブレアの演説の「私は警察国家、もしくはビッグ・ブラザー的な社会に住みたくはありません。私たちに欠かせない自由(フリーダム)のいずれかを危険に晒したくもありません」というくだりがアイロニカルに引用されている。ビッグ・ブラザーの形象、これは原稿のネタとしていただきましょう。
 映画ではトニー・ベンもブレアの言論弾圧の姿勢に憤って証言している。「オールド・レイバー」の、筋金入りの社会主義者ベンは、ブレアのように飛ぶ鳥落とす勢いから国民の失望を買うという評価の乱高下はなくて、その筋の通った生き方がイギリスで多くの人びとにずっと愛されてきていると見受けられる(1996年にウィリアム・モリス没後百年の記念イヴェントがV&Aであった際、彼が講演したときだけ講堂が満員になったのを覚えている)。いまの労働党ミリバンドらはこのあたりからもっと知恵を借りて改革していけばいいのにと思う。