学会のあとで、足と腰にくる

 ヴェネツィアからランカスターの住居に夜遅く戻り、翌朝目が覚めると、体にガタきていることに気づく。9月半ばに軽いぎっくり腰になったのが、旅の移動の負担があって、翌日はそれが若干ぶり返してしまった。さらにその翌日には、旅行中いつも以上に酒量が増したのがたたって、ほぼ半年ぶりに通風の発作に見舞われた(プリン体をたっぷり含む海産物も多く食べたのだった)。治療薬を持ってきてはいたのだが、こちらに来て体調は悪くなかったので、薬をしばらく抜いてしまっていた。その結果、一晩足の痛みで眠れずということになった。われながら懲りないものだ。
 ラスキン学会のあと、滞在を一日伸ばして、未見の場所をかなりの無理をして回ったのも、後で応えた。一日で朝方ヴェネツィアのスクオーラ・ディ・サン・ジョルジョ(カルパッチョの「セント・ジョージと竜」がある)を見てから、列車でパドヴァに移動してスクロヴェーニ礼拝堂(ジョットの連作がある)、さらに(もっと遠い)ヴェローナに移動して、サン・ゼーノ・マッジョーレ教会、ドゥオーモ、サンタナスタシア教会、アルケ・スカリエーレと回れるだけ回って、夜またヴェネツィアに戻るという強行軍を滞在の最終日におこなったのだった。パドヴァじたいは8年前に一度訪問したのだが、その時にスクロヴェーニ見学は事前予約が必要と知らず、見逃してしまっていた。ラスキンのユニークな小品Giotto and His Works in Paduaを検討するという目的もあって、改めて訪問。ところが、前日ジムに聞いていたとおり、1グループ20人数人のツアーで、15分間別室でビデオを見せられた後、堂内の見学時間がわずか15分というとんでもないもので(つまり15分でどんどん「回転」させてゆく。表向きの理由は壁画の「保護」だが、市当局の金稼ぎのためだろうというのがジムの説)、堂内を埋め尽くす連作壁画をゆっくりと鑑賞する余裕がなかった。もちろん、15分でも、見ないよりは見るほうがいいにきまっているのだけれども。
 ヴェローナまではけっこう距離があって大変だったが、サン・ゼーノなど見られたのはよかった。イタリアのロンバルディア/ロマネスクの代表作で、側廊や内陣に描かれた13~15世紀のフレスコ画は退色していてほとんど消えてしまっているところもあるが、色の褪せ方が妙なる魅力を加えている画があちらこちらにある。バーン=ジョーンズなどもこれを見て学んでいたのだなと実感。

 さて、日常に復して地味な暮らしに戻らなければならない。約束の仕事もいくつかある。ランカスターはこのところだいぶ日も短くなり(一日5分のペースで短くなっている)、朝晩は冷え込み、暖房が必要になってきた。腰はまだちょっと痛い。